インド・南アジアのニュースから思うこと(その他雑記も含む)

インド在住の筆者がをインド中心に南アジアのニュースから思うことを綴ります

カシミールが揺れた日から3年のいま

8月5日はなんの日かと問われて

答えられる人は日本人ではあまりいないかもしれません。

 

3年前の2019年8月5日、

インド北部のカシミール地方の州(当時のジャム・カシミール州)の

自治権を、インド政府が撤廃した日なんです。

www.hindustantimes.com

と言っても、???の人が多いですよね。

 

私も3年前にインドに来たばかりの頃にこのニュースを聞いて、

当時はすぐに理解が出来なかったことを今も覚えています。

 

全く知りません!という人はこちらのBBCの日本語記事をぜひ!

www.bbc.com0

 

カシミール地方っていうのは、

インドの中でも特殊な場所の1つ。

(というか、どこが普通の場所か?というくらい個性豊かな地域の集合体がインドだと思いますけど)

 

インドの中でも最北西部にあって、

いろんな王国の支配下に置かれてきました。

かつてはヒンドゥー教主体のカシミール王国だった時代もありました。

 

その後のイスラム系の王朝に支配されるようになったことで、

イスラム教徒が増え、第二次大戦後にインドが英領から独立するタイミングでは、

イスラム教徒が多数派のエリアになっていました。

 

しかし、これもまた歴史の悪戯と言いましょうか、

当時の藩王国の王はヒンドゥー教徒だったんですよね。

 

ヒンドゥー教はインド、イスラム教はパキスタン、

と1947年に分離独立するとき、

時のカシミール藩王はインドへの帰属を決定、

その際にも大混乱が起き、多くの命が失われたと言います。

 

しかしながら、

パキスタン側からすれば、

いやいや、うちはイスラム国家ですからカシミールはパキスタンであるべき!

という主張のもとでインドと衝突。

これが第1次インド・パキスタン戦争になり、

その後も2次、3次と、戦火を交えることになりました。

 

その後、両国とも核実験を実施し、

印パの争いは、世界をも巻き込む可能性がある火種を抱えることに。

その後もこの地域では、

分離独立を目指す過激派のテロが散発的に発生するなど、

ずっと不安定ではあったんですよね。

 

こうした背景を踏まえ、

カシミール地方を含むジャム・カシミール州には、

防衛や通信など一部を除いて、

独自の立法・行政・司法制度といった強い自治権が

認められてきました。

 

しかし、3年前、2期目の選挙に勝ったモディ首相が、

その公約にも掲げていた

このカシミールの自治権の撤廃を発表したんです。

(インド憲法370条の廃止という意味で、英語ではArticle 370 (A370)と表記されることが多いです)

 

当時は、大ニュースになり、

現地では治安当局が混乱を恐れて街は厳戒態勢になっていたと記憶しています。

通信も2Gほどに制限されて、

情報統制の影響が学校に通う子たちにまで及んだと報道されていましたね。

 

その後、2020年には新型コロナの感染拡大が始まり、

この3年は、本当に大変な時期だったと思います。

 

いわゆるカレンダージャーナリズムになりますが、

それから3年のカシミールは?という記事はいくつか出されていましたね。

英語記事しか見ていないので、全体のことは正直わかりませんが、

冒頭の記事のように、

テロや暴動などは減って、安定が戻っている、と書いているものもあれば、

(政府発表の数字ですから、そこも加味して考えないとね)

 

現地では、まだ治安当局に囚われたままの人もいて、

水面下で苦しむ人も多い、という論調のものも一部ありました。

 

カシミールでは、今年議会選挙が行われることになっていますが、

予定通り行くのかどうか、先行きは不透明です。

 

私自身、まだ一度も行ったことがないカシミール地方。

現在進行形で続く問題を抱える地域だということを忘れず、

その美しい風景や貴重な文化が失われないことを心から祈っています。

 

ではでは、カルミレンゲ!

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